「『子どもの頃歩いた懐かしいあの商店街の活気をもう一度取り戻したい』これが、『まつえランド』にかける私の変わらない想いなんです!」
雲一つない青空の下、京店商店街を散歩しながら彼女はそう強く語った。
彼女の名は、馬場範子。H27年度松江商工会議所青年部(松江YEG)の地域開発委員長でもあり、まつえランド実行員会を手がける敏腕松江女子である。
「私、東本町で生まれ育ったので、子どもの頃、大好きだったおじいちゃん、おばあちゃんに託けられて、京店商店街を歩いて買い物してくるのがすごく楽しかったんです。
水郷祭の時は、ジェニーちゃん人形を買ってもらいました。それが本当に嬉しかったんですよ。あの頃は、おもちゃ屋さんがあったり、靴屋さんがあったり、、、」
最初は、連日連夜プロジェクトの打合せで少し疲れていたように見えた彼女の表情も、幼い頃歩いた商店街の風景を思い出だしたのか、屈託ない少女の笑顔に変わった。そしてこう続けた。
「今って、大型ショッピングセンターに親子で車で行って、さっと買い物して、さっと帰って、、、
便利にはなったとは思います、人の流れも変わりました。でも、私は、あの頃の活気のあった商店街が大好きだったんです。商店街でイベントがあれば、そこで子どもが遊んでいて、お父さん、お母さんは、その横にあるお店に入って買い物して、お店の人とも仲良くなって、そこに会話が生まれ、次はどの店に入ろうかな・・・ってまた街歩きしたりして、それでいつの間にか日が暮れて・・・」
『まつえランド』・・・そのネーミングから、漠然とテーマパークのイメージがひとり歩きしていたことは否めない。しかし、松江に生まれ育ち、松江をこよなく愛し、松江の活性化のために、様々な事業を最前線で取り組んでいる彼女だからこそ、思い描いた『まつえランド』の本当の姿があるはずだ。
「最近の松江YEGは、水郷祭や水燈路のように、他団体が主催となる大きな土台があってその一部を任せられている活動が中心となっていますよね、もちろん、こういった取り組みは、地域を盛上げるために継続していかなくてはならない大事な取り組みだと思っています。
だけど、本当にそれだけでいいのかな?私達が、青年経済団体である以上、今までにない、何か新しいことを松江YEG主体で取り組んでいかないと!、そして、その活動をもっと自分たちが積極的に発信していかないと!って思ったんです。
昨年度水郷祭、水燈路といった大きなイベントを終え、一緒に汗を流したメンバーの皆んな(H26年度地域連携委員会)とは、そんな話題で盛り上がりました。」
きっかけは、彼女の本業である『馬場印刷所』としてとある商店街と接点を持った時からだと言う。
(そういえば、馬場さんって、松江YEGなんですよね?)
「はい、そうですけど?」
(今の商店街の悩みは、いろんなお祭りやイベントをやっても、結局、自分たちのお店にはお客さんが入ってくれないんですよ…
私達は、商店街である前に、一軒一軒の商店であり、商売人なんですね。だから、YEGの馬場さんとこうして関われることも、何かのご縁ですし、YEGと何か一緒にやれたらいいなぁって思いますよ)
YEGと商店街は別物ではない、一つ一つの商店(商売人)が集まって街を形成している…
そうなんだ、YEGと同じなんだ!
私も、何か新しいことをしていきたいと思っていた。商店街と一緒に何かできないかな?
今までもやもやとしていたものが、吹っ切れた瞬間。彼女のプロジェクトはここから既にスタートしていた。
「イベントをすることが目的ではないんです、イベントはきっかけでしかないんです。商店街の皆さんは、商店街の名前をもっともっと知ってもらい、お店に来てもらいたいと思ってます。私達松江YEGには、130もの事業所さんが加入してます。私達も、商売につなげたくて、YEGに加入しているのが本音だと思います。商店街の皆さんも、私達の力、知恵を求めてます。私達YEG130事業所が、商店街と一緒になって商売につなげる何かができれば、それが相乗効果(Win-Win)となって、街の活性化につながると思います。商店街の皆さんと話していると、『まつえランド』は、5年くらい息の長いスパンで成長させていけば良い、まずは、松江YEGと関われることが嬉しい、って言ってくれてます。この松江の街の活性化に向け、この街をこうしたい、という理想の延長上に、『まつえランド』があると思ってます。そして、一人でも多くのYEGメンバが、この『まつえランド』へ関わっていこう!という考えに変わることができたなら、それも成果だと思ってます。
松江城も国宝になり、観光でも推していくことになると思います。そうなれば、県外・海外からもたくさんのお客さんに来ていただくと思います。だからこそ、私達は、商店街の活性化に目を向けなくてはいけないと思います。」
そして、彼女は最後にこう付け加えた。
「委員会のメンバーには本当に支えられています。馬場ちゃんは、楽しいことだけ考えて下さい、って皆んなに言われるんです。私の『まつえランド』はUSJというより、本当は、遊園地のメリーゴーランドをイメージしてるんです。でも、色んな人の色んな意見があって、『まつえランド』をよいものにしていきたいと思っています。」
彼女のプロジェクトは本格的に動き出した。
インタビュー: 小松 洋弓(西日本電信電話(株)島根支店)
撮影:田辺 厚志( 田辺畳店)